口々に文句を言っているのが聞こえる。

「ニカ、うちらと組もう。」

体育館の隅で座っていたら、ナナミとクラスの子達が声をかけてきた。
ナナミは運動神経が良いから、自然と人が集まってくるのだろう。

「私が入ったら、負けちゃうよ…」

このままどのチームに入らないわけにもいかないけど、ナナミには迷惑をかけたくはない。


「いいよ、負けても。ね、みんな!」

周りにいる子達が頷く。

ナナミがいるだけで、私を取り巻く世界が変わるのはなんで…


「ほら、行くよ!」

「…うん!」

ナナミの手に引かれ、私は立ち上がり、コート内にたつ。


「私にボール、回して」

「わ、分かった。」


何でだろう。

ナナミがすごくカッコ良い。


先生が試合開始のホイッスルを鳴らす。


ボールが瞬く速さで動いていく…

バスケ部の子達の間も切り抜け、ナナミがドリブルしたボールは、リングに吸い寄せられていくよう…

どんどんシュートが決まっていく。

私は微動だにせず、ただただ立ちつくす。



「ニカー!」


ナナミの絶妙なコントロールのボールが私の手元に降りてくる。


(シュート!)


口パクだけど、ナナミが何を言っているか分かった。