「昨日はごめん。」
「あれはニカ先輩のせいじゃないですよ。」

次の日。
私は昨日の話の続きを、美咲ともう一度、しっかり話した。


「別れてください。」

「もちろんですよ。」


私の緊張を他所に、美咲はあっさりとした、まるで全てが最初からわかっていたかのような返答だった。

「分かりやすすぎですよ、先輩は!」

無理矢理、笑顔を作っているんだろう。
目が潤んでいる。


「私は、美咲を、悲しませてばかりで、本当にごめんなさい。」

私の目から涙がこぼれ落ちたのは、きっと美咲からのもらい泣きだ。

「最初から分かってました。それでも、良かったんです。…ニカ先輩の近くにいられたことが、嬉しかったんです。…むしろ私が悪いんです。」







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誰かに愛されたかった。
どんな形でも良い。

安在家は芸能一家だった。
とはいっても、父と母は裏方。
演劇業界では知らない人はいない、脚本家の父と舞台演出家の母。

その2人の影響があってか、私は中学に入ると養成所に入った。
2人が作り出すものの、演者になりたいと私は思った。

だけど、



「雅(ミヤビ)はすごいなぁ、メインキャストか」
「素敵ね、早く雅の活躍見たいわ!」

たまたま私が進められたアニメの声優オーディション。
『私もお姉ちゃんと一緒に行きたい!』と会場に着いてきて、ノリで受けた年子の妹が合格した。