目を開けてよ。

もうあなたを裏切らないから。






「ニカちゃん、ありがとうね」
「いいえ、私は何も…」

夜が遅いから、とナナミのお母さんが車で家の近くまで送ってくれた。
車の中は静かだった。
娘が事故にあい、怪我をしている。そして、目を覚まさない。
それなのに私の心配をしてくれた。



「ここです。」
「ごめんね。夜遅くまで付き添ってくれて…」

「ありがとうございま…」

家の前に着き、お礼を言おうとした時、ナナミのお母さんが私の言葉をさえぎった。


「ニカちゃんの名字って…」

「…す、須藤です。」

家の表札を見て、ナナミのお母さんは何秒か動きを止めた後に、まるで人が変わったかのように私にこう言った。




「あまり、ナナミに関わらない方が、良いわよ…」




その言葉の真意が分からなかった。
関わらない方が良い?
何で?

「じゃあ、今日はこちらこそありがとう。」

車は颯爽と家の前を過ぎ去っていった。


私は分かっていなかった。

私たちの、運命を。