私は努力をしてこなかった。
何かを一生懸命にやり遂げたこともない。

何も無い。

隙間を埋めるためのピースは、私に虚無感を植え付けていく。

苦しい。
心が苦しい。

生きているのに、生きた心地がしない。


普通に、普通に。


普通って何。




「ニカ?」
「あ、ごめん。」

バイト中もこんな感情に支配されて、時々手が止まってしまう。
なるべくあの顔を見ないように私は任された仕事をこなしていく。

楽しかったはずのバイトが、楽しくなくなっていく。



「ニカ調子、悪いんじゃないの?」

あなたにそんなこと、言われたくない。

「何かあるなら、話聞くよ?」


話って…


「ニカ、先輩…志崎さん……」

私たちだけのスタッフルームに、美咲が入ってくる。
重苦しい空気を察して、ドアを開けたまま入ろうとしていた足を止める。
そして去っていく。


(追いかけないと…)


足が動かない。

その場で立ち尽くすことしか出来なかった。


「ニカ…」
「すみません。戻りましょうか。"志崎さん"。」


お互いのことを知らなかった私たちに戻ればいい。

苦しい。何で。

私は1人でスタッフルームを出た。
"志崎さん"はしばらく出てこなかった。