その後は事実無根だと言うのに、回りからの突き刺さるような視線のせいで、口を開くことが出来なかった。『不倫』の定義がよく分からなくて、全ては自分が悪いと思い込み、一線は越えていないとはっきり言葉にすることが出来なかった。
その事実をここで話をするのはためらわれたが、ゆっくりと自分の言葉で全てを涼に話した。それを静かに聞いていた涼が私の手を取ると、顔を歪めていた。今にも泣き出しそうな表情に、一緒に悲しんでくれているんだと思い嬉しくなった。
「涼、そんな顔しないで。もう過ぎたことだし、私は大丈夫だから」
「大丈夫って……美月、どうしてそんな大事なこと黙っていたの?!それ美月悪くないよね?向こうが手を出してきただけだよね?」
はぁーー。っと大きく溜め息を付いた涼。それは私のために怒ってくれているんだと言うことが分かって、何だか笑ってしまう。
「笑い事じゃ無いから!どうしてその時、俺が側にいなかったんだろう。悔しくて仕方が無いよ」
「でもその時に出会っていたら、今のような関係にはなっていなかったかもよ。辛かったけど、大和さんに突き放されて、家族とも疎遠になって、途方に暮れる私を涼に見つけてもらえて良かったって思う」
そう言って笑うと涼が強く抱きしめてくれた。
「俺もあの時、美月を見つけることが出来て良かった」
広くて大きな胸の中に収まりながら、美月は安堵して体を涼に預けた。


