「美月に聞きたいことがあるんだけど」
真剣な涼の眼差しに緊張が走る。
「うん……何?」
「美月は不倫をして職場を追い出されたんだったよね?そのせいで家族とも疎遠になってしまったって言っていたよね?」
「うん……」
「でも美月は処女だった……よね?」
「うん……」
涼が聞きたいことは分かる。
私と大和さんとの間に肉体関係は一切無かった。確かにキスはしたし、あの人に引かれていたのは本当だ。それでもあの時……大和さんは不倫だったと、はっきりと答えたんだ。しかも、薬を盛られて一線を越えたなどという虚言まで吐いたてきた。だから私も不倫なんだと思って……一線は越えていなくても奥さんのいる人を好きになってしまった、イコール不倫なんだと思った。でもそれは違うのでは無いかと、悶々と考える日もあった。
あの日、あの時……一線を越える覚悟でホテルまで行っていたから……。結局そのまま帰って来てしまったけれど。
私はあの時、謝った選択をしなくて良かったと思った。


