「お姉ちゃん!」

 そう声を掛けながらお姉ちゃんの前に飛び出すと、お姉ちゃんの体が石のように固まった。

「お姉ちゃん!」

 もう一度大きな声で呼ぶと、我に返ったお姉ちゃんがサッと顔を青くさせた。

 それは実の妹に見せる顔ではないのでは?と思うが、今までしてきたお姉ちゃんに対する仕打ちを考えれば、仕方の無いことだった。

 随分と嫌われてしまったな。

 いつの間にか大きな溝が出来、修復できないほどになっていた。

 昔はそれなりに、仲の良い姉妹だったのに……。

 そんな事を思いながら、姉の瞳にワザと映り込むように顔を覗き込む。

「……智咲」

 何とか絞り出したであろう弱々しい声が聞こえてくる。

 あらあら……怯えちゃって、みっともない。

 昔の凜とした姿は、何処に行っちゃったのかしら。

 溜め息を付こうとしていると、回りがザワつき始める。

「おい、岡本さんのことお姉ちゃんって呼んだぞ?」

「あの可愛い子って、岡本さんの妹さん?」

「えっ……まじで!ありえねー」

 ふふふ……。

 そうでしょうとも、私は可愛いの。

 お姉ちゃんとは違うのよ。

 もっと言ってよ。お姉ちゃんとは違うって!

 私は男達が見ている方へと向かって、自分が一番可愛く見える角度で微笑んだ。

 すると……。

「うっわ!マジで可愛い」

「岡本さんと本当の姉妹なのかな?似てなくね?」

 私とお姉ちゃんを交互に見ながら男達が驚いた顔をしている。

 クスクス……その驚いた顔、最高なんだけど。

 そっと、お姉ちゃんの方へと視線を向けると、体を小刻みに震わせながら青くなっていた。それを目にし、私の身体はゾクゾクと震えた。

 ああ……お姉ちゃん、最高だよ。