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 智咲は美月のアパートにやって来ていた。何度もインターホンを押しているというのに出てくる気配が無い。

 お姉ちゃんてば、どうして出てこないのよ。

 休みの日だから外に出ているのかな?

 一体誰と?

 そんな友達はいないはずだし、彼氏?

 そんな事はあり得ない。

 今のお姉ちゃんの容姿で、彼氏が出来るはずが無い。

 それなら一体どこへ?

 怒りで何度もインターホンを鳴らしていると、隣の部屋の玄関扉が開いた。

「岡本さんなら、ずいぶん前に引っ越されましたよ」

「えっ……本当ですか?」

「随分と急だったみたいですよ。夜に逃げるように引っ越されたから、何かあったのかと心配していたんです」

 夜……逃げるように?

 お姉ちゃんに一体何があったんだろう?

 若干の心配をしたものの、お姉ちゃんの事だから何処かで生きているだろうと思い、その日は家に帰った。実の姉に対し酷いと自分でも思いつつも、何かあれば警察から連絡が来るだろう。などと考えていた。しかし、警察から連絡が来たらそれは取り返しが付かなくなった後だと言うことに智咲は気づいていない。

 とことん楽天主義者の考え方である。

 さて、どうしたものかな……。

 そうだ来週、お姉ちゃんの職場に行ってみようっと。