美月は合鍵を使い扉を開けると、リビングにいた涼が出迎えてくれた。
 
「美月おかえり。お疲れ様」

 涼が迎え入れたくれる。

 それだけで泣きそうになる。

 お帰り……それは自分が無事に帰ってきたことを喜んでくれる言葉。

 美月は震える唇をキュッと引き結ぶ。

「ただいま」

 そう声に出した途端、自然と涙が溢れ出した。

 美月の瞳から流れ落ちる涙に、涼が驚きながら駆け寄り、抱きしめてくれた。

「美月どうした?何かあった?」

 優しい言葉に更に涙が溢れ出す。美月は涼に抱きしめられた状態で、涼のシャツを掴み顔を左右に振った。何でも無いと涼に伝えるため、顔を振り続ける。

「本当に大丈夫なの?こんなに泣いて」

 涼が指の腹で今だに溢れ出し続ける涙を拭いながら、眉を寄せた。なかなか泣き止まない美月に、あたふたしながら涼が美月の顔を覗き込む。

 泣きながら美月はそんな涼の表情が可愛くて、愛おしいと思った。

 その時、美月は溢れ出すこの感情を無視することが出来ないことに気づく。

 これは恋なのだと。