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 大学を真面目に通っていた美月は、それなりの成績で卒業した。そのおかげで親が自慢するような大きな会社に入社することも出来た。大学に入った時に一人暮らしは初めていたが、実家から更に離れた場所に移り住んだ。妹が簡単には来れないように……。そして成人を迎え、社会人として恥ずかしくないよう生きようと決めた。そのためには容姿を整え、清潔感があるようにと努めた。すると勉強の時と同じように回りの評価が上がった。評価されるのは単純に嬉しい。そんな評価と共にあまり人と関わらない私はクールビューティーなんて呼ばれることもあった。ビューティー……なんて言われても、他人の評価は当てにならないだろうから、そこは聞こえないふりをしよう。

 今日も人の迷惑にならないよう黙々と仕事をこなしていく美月。新人としては仕事の出来る私は、頼まれた仕事を何でも引き受けていく。出来上がった資料を手に上司のデスクに行くと、上司が満足そうに頷いた。

「うん。良い出来上がりだ。今年の新人は戦力になるな」

 上司がそう言って笑ってくれる。

 自分がやったことに対して、評価してくれる会社の人達。

 勉強の時とは違う、今までに感じたことの無い満足感と、高揚感。人生で今が一番だと思うほどに、毎日が充実していた。