美月はベッドで丸くなっていた体を起こすと、男性に手を引かれ立ち上がった。目の前に立つ男性は思っていたより背が高く、パジャマからチラリとのぞかせた腹部には、腹筋が綺麗に割れていた。朝日を浴びて男性がフッと微笑むと、それだけで男性特有の色香が漂って来るようでクラリとした。

 こんなに美しいと思う男性は初めてで、莉愛は朝日とは違うまぶしさに目を覆った。

 まっ……眩しい……眩しすぎる。

 神はなぜ、こうも差別的なのだろう。

 一人の人間に美しさの椀飯振る舞いをして。

 私なんかより、美しく、色気があるなんて……。

「美月どうしたの?」

 美しい彼がこてんと首を傾げると、途端に可愛らしくなって美月の胸がキュンと締め付けられた。異性に対してこんな感情が芽生えるのはいつぶりだったか?自分の心をどう対処したら良いのか分からず、赤くなった顔を隠すことも出来ずに固まっていると、男性が美月の頬に手を伸ばしてきた。

「美月?本当に大丈夫?」

 本当に心配しているのだろう。男性の形の良い眉が下がっている。美月は何でも無いと言うように首を左右に振った。

「あっ、その大丈夫です。えっと……あなたは……。昨日のホストさんですよね?」

「ああ、覚えてないか……俺は涼。笹原涼だよ」

 笹原涼(ささはらりょう)と名乗った男性は、清々しい春の朝日の中で優しく笑っていた。