彼と別れて数日後、学校の正門の前に妹が立っていた。彼が妹に吸い寄せられるように近づいていく。そんな彼の腕に可愛らしい妹が絡みつく。

 幸せそうなカップルの誕生だ。

 呆然と二人を見つめていると、私に気づいた妹がニヤリと口角を上げた。それに気づかない生徒達の視線が私に集まる。

「うっわ。妹が姉の彼氏取るとか、やばっ!」

「鬼畜すぎ……」

「悲惨……」

 妹を非難しつつも、こちらに聞こえるよう話し、面白がる生徒達。

 そんな言葉を聞き流し、大丈夫だ……大丈夫だと自分に暗示を掛け、震える体を抱きしめる。

 大丈夫だ……私は大丈夫……。

 全然大丈夫なわけがないのに……。

 それでも自分にウソを付き続ける。

 いつもならこれで暗示に掛かるのに、今回はダメだった。 

 無理だ……。

 辛い。

 大好きだった人からの裏切りに耐えられなかった。

 ほくそ笑む妹の顔が脳裏に浮かぶ。

 思い出すだけで、目の奥が熱くなる。

 どうして私ばかりがこんな目にあわなくてはいけないの?

 私は何もしていない。

 何もしていないのに……。

 正門を出ると涙が溢れ出した。

 止めどなく流れる涙。


 ああ……ホント、この世界は物語のようには上手くいかない。