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 土曜日、美月は智咲に指定されたホテルにやって来ていた。あの日から毎日のように鳴る着信音、それからメール音。メールには必ず来て欲しい。来ないと悲しい。来ないと泣く。来ないと辛い。

 来ないと……。というメールが毎日何回も送りつけられ、心底うんざりとさせられていた。仕方なく美月はここまでやって来たがすでにもう帰りたい。そう思いながらホテルのレストランの中に入って行く。いつもの仕事をする時と同じ地味なスーツに、眼鏡とマスク姿の美月に、ホテルのスタッフは一瞬固まっていたが、すぐに笑顔で対応をしてくれた。

「お客様、待ち合わせですか?」

「あっ……はい」

「お名前を伺っても?」

 そんなやり取りをしながらレストラン内を見渡すと妹を発見する。三年ぶりに見る智咲は昔と何も変わらず、可愛らしい容姿をしていた。

「あっ、大丈夫です。見つけたので」