美月は自分の部屋のベッドに突っ伏したまま、時間が過ぎていくのを待った。シンと静まり返っていると思っていたが、耳を澄ませると色々な音がした。始めに聞こえてきたのは、時計の秒針だった。それから外を走る車やバイクの音、鳥や犬などの動物の鳴き声……普段はあまり気にならない音が、大きく聞こえた。まどろむ意識の中でボーッとしていると、突然スマホの電子音が聞こえてきた。その音にビクリッと体を跳ねさせながら起き上がりスマホを手に取ると、スマホのディスプレイには会社の名前があった。スマホをタップし左耳に近づけると、部長の声が聞こえてきた。

「岡本くん……急な話だが、君は子会社に左遷となった。意味は分かるかね?」

 左遷……。

 部長の言葉に手が震えだし、スマホを持っているのがやっとの状態になっていた。

 新人ながら私は文句も言わずに仕事をしてきた。それなりに評価もされていたというのに、会社はこんなにも簡単に私を切る捨てるのか……。

 美月は唇を強く噛み絞めた。部長がスマホ越しに何かを言っているが頭の中には入ってこない。しかし、そんな中でも大和が気になった。

 グッと噛みしめていた唇を開くと、血の味がした。よほど強く噛みしめていたのだろう。今はそれを気にしている場合では無かった。

「あの……大和さんは?」

 すると部長が電話越しに、大きな溜め息を付いた。