「はっ!何だその顔は、まさか今更、間違えでしたと?人一人の人生を狂わせ、突き落としておいて、ごめんなさいでは済まされないだろう。どんなに美月が泣いて、追い詰められていたか、お前達は知っているのか?」
涼の低い声がホールにこだました。
そこから涼が一気にとどめを刺す。
「会社の人間は誰も自分の言葉を聞いてもくれず、両親には勘当され、美月はボロボロの状態で彷徨っていたよ。出会った頃の美月は笑顔も忘れ、泣いている時でさえ、顔を歪めずに泣いていた。それはまるで人形の様だったよ。そこまで追い詰めたのは?なあ?一体誰なんだろうな?」
涼の話を聞いていた人々が、唖然とその話を聞いていた。美月の壮絶な人生に絶句しているのだろう。同情や哀れみといった視線がこちらに向けられた。
「でも……うちの人と不倫していたのは本当の事でしょう」
大和の奥さんが、顔を青くしながら涼に訴えた。
「それはそこにいる男に聞いた方が良いのでは?」
大和に人々の視線が向けられた。
「おっ……俺は……美月に……その女にそそのかされたんだ」
「あなた……」
心配そうに自分を見つめる妻に、大和が必死に訴える。
「違う、違うんだ。俺は……」
言い訳をしようとしている大和を、涼が汚物を見る様な目で見つめながら淡々と話を進めた。
「何が違うんだ?不倫なんか無かったのだろう?」
「不倫は……あった……現にピアスが……」
「そうだな。あれは誰のピアスだったのだろうな?」
そう言った涼の視線が智咲に向けられた。
智咲……?
涼の視線の意味は?


