両手を強く握りしめながら俯くと、そんな私を守る様に涼が一歩前に出た。
「へー。美月が不倫ね」
「そうよ。お姉ちゃんは不倫をしていたの。あなたも騙されているのよ」
そう言って智咲が叫んだ。
それを見ながら涼が大和に視線を向けた。
「そこにいるあんたが美月の不倫していた相手だったんだろう?」
大和が一瞬顔を引きつらせたが、すぐに立ち直りこちらを真っ直ぐに見つめてきた。
「ああそうだが?」
「ここで真実を言え。全て正直に答えるなら、このことは全て水に促す」
「真実とは?」
くくくっ……と大和が薄ら笑いを浮かべた。
この人はこんな風に笑う人だっただろうか……?
大和さんがまるで知らない人のように見える。
「そうか、しらを切り通すつもりか。それならそれで良い。それでは、このピアスに見覚えは?」
涼が私の耳に付けられたピアスを見せた。
それに反応したのは大和の奥さんだった。
「それは、うちの人の服に入っていたピアスよ。それがきっかけで不倫を知ったのよ。あのピアスは捨ててやったのに、あなたまだそんな物を付けて、夫に未練があるのね」
大和さんに未練なんて無い。
その言葉が出てこない。


