智咲や両親の言葉を聞いていた人々の視線が、冷たい物へと変わっていく。
この冷たい視線……よく知っている。
今まで何度となく向けられてきたものだ。
もしかして、涼も同じような目でこちらを見ているのだろうか?そう考えただけで体が震え、恐怖を感じた。腰に回された手が離れてしまったら……そう思いながら震えていると、涼の腕は離れること無く、より一層強く抱き寄せられた。
涼は私を信じてくれるの?
震えながらも、そっと涼を見上げると、優しく微笑みながらこちらを見てくれていた。
「大丈夫だよ。美月、俺は君を見ている」
大丈夫……大丈夫……大丈夫……。
涼の声が頭の中で反芻|《はんすう》する。
優しいその声にホッと息を吐き出すと、そこで甲高い声を上げた人物がいた。
「あなた岡本美月なの?!うちの人にストーカーまがいな事をして、不倫までした?会社を追い出されたくせに、またうちの人につきまとうつもり?」
そう言ったのは大和さんの奥さんだった。
智咲、両親、大和の奥さんの四人からの言葉の攻撃に、美月は口を開くことが出来なかった。
また、全てが悪い方へと進んでいく。


