美月は涼に言われたとおりに口角に力を入れ、微笑みながら前に出る。するとホールにいた人々から更に大きな拍手が沸き起こった。

 この状況に困惑しながらも、それを顔に出さないように気をつけて歩く。

 ホールにいた人々から集まる視線……。こんなに沢山の人達から注目を集めたことの無い美月は、不安からエスコートしてくれる涼の方へと視線を向ける。するとそれに気づいた涼が、フッと微笑み返してくれる。それが嬉しくて美月も微笑むと、ホール内がザワつき始めた。

「まあ、今の見まして」

「あの女性は一体……?」

 美月を詮索する声が沢山あったが、その他にこんな声が聞こえてくる。

「まあ、あれが?」

「素晴らしいわ」

「初の女性物でしょう?」

 などと言う声が、あちらこちらから聞こえてくる。

 涼にエスコートされながらホールの中央まで来ると、クルリと一回転させられる。するとマーメードラインのドレスの裾と肩から足首にまで伸びる薄いベールのようなレースがヒラリと空を舞った。ドレスと美月の美しさに、女性達だけではなく男性からも「ほうっ」と溜め息が漏れる。

 涼がホール内の人々の反応に満足しながら、頭を下げるのを見て、美月も頭を下げた。