何だかよく分からないが、涼に促されるまま大きな扉の前までやって来てしまった。

 するとホテルのスタッフと思われる人々が、扉の前で忙しなく働いている。

「笹原様、合図がありましたら扉を開けますので、中にお入り下さい」

 その言葉に涼が頷く。

 ホテルスタッフ二人が、大きく重そうな両開きの取っ手に手を掛けた。

「それでは扉を開きます。そのまま真っ直ぐお進み下さい」

 何も分からないまま、扉が開かれる。するとそこには煌びやかな世界が……。ここは本当に日本なのかと疑うような世界が、目の前に広がっていた。美月が戸惑っていると、涼がそっよ寄り添うように手を取り腰に手を回してきた。

 この人が隣にいてくれるなら大丈夫と、何も分からないにもかかわらずそう思えた。

 ホール内はシャンデリアが輝き、色とりどりのドレスを着た女性達や、高そうなスーツを着た男性達が拍手をしながらこちらを見つめている。
 
「美月行くよ。大丈夫、きみは笑っているだけで良い」