「おいしい!」

ミアの顔が一瞬にしてフニャリと蕩ける。くどすぎない甘さのクッキーは、何個でも食べることができそうだ。

おいしい、と言いながら熊のアイシングクッキーを手にしたミアを見て、リーマスは幸せそうに微笑む。

「ミアはおいしそうに食べるよね」

「だって、本当に美味しいんだもん!」

ミアがそう言うと、リーマスは「そういうところも好きだよ」と微笑む。夕焼けに照らされた彼の顔にミアはまた胸を高鳴らせてしまう。そして、今いる場所が陽の光が降り注ぐ中庭でよかったと思った。

(顔が赤くなっても、夕焼けのせいでわからないから……)

何故そう思ってしまうのか、自分でもよくわからない。ミアは自分の心に芽生えた想いを誤魔化すように、リーマスに訊ねる。

「ねえ、このクッキーどうしたの?」

「僕が作ったんだ。ミア、こういうの好きかなって」

勉強も運動もできる優等生はお菓子まで作れてしまうのか、完璧すぎてますます近付いては行けない人になってしまったではないか、そうミアは驚きながら思う。