会場の明かりが逆光になっていてソレンヌの姿が一瞬、影のように見えたが目が、慣れてくると相変わらずの彼女の美しさに目を奪われる。
 
 暮夜の時なのに、腰まで流れる金の髪は光がこぼれ落ちているように思える。
 白地にピンクの薔薇が飾られたドレスはシンプルだが、彼女によく似合う。
 蒼穹の瞳に通った鼻筋。そして潤いのある薄桃色の唇。

『妖精姫』とあだ名されるだけあり、儚げな美しさなのに存在感がある。

「存在感」はきっと、王太子に選ばれたという自信から生まれたのだろう。
 
 半年ほど前の彼女も美しかったけれど、今のような高尚なイメージはなかった。
 どちらかと言えば、可愛らしさが上回っていた。
 
 ソレンヌはクロエの横に並ぶと扇をたたみ、王宮のバルコニーから望める景色を眺める。
 クロエもそれに習う。
 
 月が高く上がり、白々としたほのかな明かりで城下町を照らしている。
 右には河川があり、それも月明かりを受け燻し銀に光っている。
 キラキラとこの国はおとぎ話のように美しい、クロエはそう思う。

「美しい国よね、そう思わない?」
「ええ、本当に」
 
 ソレンヌの感極まった言葉にクロエも同意する。