「貴女、そう確かゲンター侯爵のご息女のブレンダ様……でしたわよね?」

「は、はい……っ、ご、ごきげんようクロエ様」
 クロエに話しかけられてブレンダと呼ばれた令嬢は、強張った表情に無理矢理笑みを乗せ、挨拶をする。
「ごきげんよう」
 と。
 
 貴族の間でも爵位による階級で、如実に身分差がある。
 
 クロエの父もブレンダの父も同じ『侯爵』。従って対等な関係である。
 だからこそ、クロエは許せなかった。
 
 扇をひらめかせながらブレンダに近づく。
 ブレンダは緊張に顔を引きつらせつつも、懸命に笑みを浮かべている。
 
 クロエは嫌な相手にも笑みを作ろうという彼女の努力に敬意を表するも、気分は落ち込む。
 
 それでも言わずにはいられなかった。