クロエは思い切って扇を外し、赤く火照った顔でルイスを見上げた。
細い目だって小さな目だって言われて蔑まれても、彼は「個性」だと言ってくれた。
祖母似の華やかさに欠けるこの容姿を前にしても彼の態度は変わらなかった。
いつもいつも「可愛いお姫様」と私の手を取ってくださった。
私の努力は王太子妃になるためじゃない。
あなたの――妻に相応しくあれと。
「……あっ、あの……っ」
「ルイス様、ここにいらっしゃったのね」
ガラス戸が開いて、一人の令嬢がやってきた。クロエの知らない女性だ。
彼女は当たり前のように、それが当然のようにルイスの腕を取る。
「急いで、貴方に紹介したい方がいるの」
と、ぐいぐいと会場へ戻そうとする。
クロエと彼女が目が合う。
彼女は「無作法でごめんなさい、でも急いでいるの。あとで改めて謝罪に伺うわ」とだけ告げる。
クロエは突然の彼女の登場に、口を挟めなかった。
いつものクロエだったら、こんな無作法な登場をしてきた彼女についつい礼儀を教えるだろう。
けれど石のように固まってしまい、口も身動きもとれなくなってしまった。
ただ、親しげにルイスの腕を掴んでいる箇所に釘付けになっていたのだ。
「ちょっと待ってくれ! 私の要件が済んで……っ!」
「そんなの、あと!」
令嬢はよほど焦っているのか、鬼気迫る表情でルイスを引っ張っていく。
「クロエ、済まない。また改めて……!」
「……はい」
クロエはそう返事をするだけで精一杯だった。
喉が震えて気の利いた言葉なんて出せようもなかったから。
細い目だって小さな目だって言われて蔑まれても、彼は「個性」だと言ってくれた。
祖母似の華やかさに欠けるこの容姿を前にしても彼の態度は変わらなかった。
いつもいつも「可愛いお姫様」と私の手を取ってくださった。
私の努力は王太子妃になるためじゃない。
あなたの――妻に相応しくあれと。
「……あっ、あの……っ」
「ルイス様、ここにいらっしゃったのね」
ガラス戸が開いて、一人の令嬢がやってきた。クロエの知らない女性だ。
彼女は当たり前のように、それが当然のようにルイスの腕を取る。
「急いで、貴方に紹介したい方がいるの」
と、ぐいぐいと会場へ戻そうとする。
クロエと彼女が目が合う。
彼女は「無作法でごめんなさい、でも急いでいるの。あとで改めて謝罪に伺うわ」とだけ告げる。
クロエは突然の彼女の登場に、口を挟めなかった。
いつものクロエだったら、こんな無作法な登場をしてきた彼女についつい礼儀を教えるだろう。
けれど石のように固まってしまい、口も身動きもとれなくなってしまった。
ただ、親しげにルイスの腕を掴んでいる箇所に釘付けになっていたのだ。
「ちょっと待ってくれ! 私の要件が済んで……っ!」
「そんなの、あと!」
令嬢はよほど焦っているのか、鬼気迫る表情でルイスを引っ張っていく。
「クロエ、済まない。また改めて……!」
「……はい」
クロエはそう返事をするだけで精一杯だった。
喉が震えて気の利いた言葉なんて出せようもなかったから。


