学生時代にああだこうだと礼儀に関して口うるさく言ったのが「感謝している」と言いながらも、内心は気にくわなかったのだろう。
現国王も王妃も、またアロイスもおそらく、慣れない王宮の規則に戸惑うソレンヌのために自分を傍に付けようと考え、またそれを実行しようと考えるだろう。
しかし、それを反対する者も出てくる――この『悪役令嬢』という噂を気にかけて。
新しい王太子妃の周囲も不名誉なことがあってはならない。
蔑称がついている自分を外すだろう。
ソレンヌは意趣返しと同時、自分が王太子妃となったときクロエが近づかないように裏で手を回していたのだ。
「それに関しては既に父がお断りをしておりますし、わたくしもそうお願いしました。ソレンヌ様はコミュニケーション能力が高うございます。きっと新しい環境の中でも自分を見失わずにやっていけましょう」
「……そうか、そうなのか……しかし、クロエ。君はそれでいいのか?」
ルイスが神妙な顔をする。
「何がです?」
「その……君が陰でなんと言われているか知っている……。その出元も私は把握している。せめてそれだけでも払拭すべきだと思うが」
「いいのです。わたくし、王宮の中枢にいたくありませんから」
「そうなのか?」
そう尋ねるルイスにクロエは口角を上げる。
「だって中枢にいたらまた余計なお節介をやいて、今度は『悪役侍女』とか『悪親友』とか囁かれそうですもの」
「なるほどな」とクロエの言い分に、ルイスは快活に笑った。
「それに、わたくしも普通の女性として……」
クロエが恥ずかしそうに口ごもる。
それはあまりにの小さな消え入りそうな声でルイスは「ん?」と耳に手を当てた。
現国王も王妃も、またアロイスもおそらく、慣れない王宮の規則に戸惑うソレンヌのために自分を傍に付けようと考え、またそれを実行しようと考えるだろう。
しかし、それを反対する者も出てくる――この『悪役令嬢』という噂を気にかけて。
新しい王太子妃の周囲も不名誉なことがあってはならない。
蔑称がついている自分を外すだろう。
ソレンヌは意趣返しと同時、自分が王太子妃となったときクロエが近づかないように裏で手を回していたのだ。
「それに関しては既に父がお断りをしておりますし、わたくしもそうお願いしました。ソレンヌ様はコミュニケーション能力が高うございます。きっと新しい環境の中でも自分を見失わずにやっていけましょう」
「……そうか、そうなのか……しかし、クロエ。君はそれでいいのか?」
ルイスが神妙な顔をする。
「何がです?」
「その……君が陰でなんと言われているか知っている……。その出元も私は把握している。せめてそれだけでも払拭すべきだと思うが」
「いいのです。わたくし、王宮の中枢にいたくありませんから」
「そうなのか?」
そう尋ねるルイスにクロエは口角を上げる。
「だって中枢にいたらまた余計なお節介をやいて、今度は『悪役侍女』とか『悪親友』とか囁かれそうですもの」
「なるほどな」とクロエの言い分に、ルイスは快活に笑った。
「それに、わたくしも普通の女性として……」
クロエが恥ずかしそうに口ごもる。
それはあまりにの小さな消え入りそうな声でルイスは「ん?」と耳に手を当てた。


