「そんなに溜め息ばかり吐くなら、アロイスのこと、諦めなきゃよかったのに」
ルイスが持ってきた飲み物をクロエに渡す。クロエはありがたく受け取る。
けれど、クロエの顔は困ったように眉を下げるだけだ。
「そう申されても、これだけは仕方がありませんわ。わたくしは選ばれなかった。そして選ばれようとも思っておりませんでしたから」
「……君とアロイスは物心ついた頃から一緒だろう? 私はてっきり王太子妃に選ばれるのは君だと思っていたよ」
「アロイス様の心を射止めるご令嬢が現れなかったら、そうなっていたと思います。しかし、彼は自分の意思で伴侶をお決めになった。わたくしはそれでいいと思います」
「クロエは、アロイスのことをなんとも思っていなかったのかい?」
ルイスの問いに、クロエはさらに眉尻を下げる。
それを見てルイスは、自分はこの質問をするべきでなかったと謝罪する。
「すまない、あまりに失礼な問いだったね」
「いえ、ルイス様の他にもそう問いかける方々が大勢いて……少々辟易しておりました。確かにわたくしはアロイス様を囲む友人中では異性で一番近い位置におりましたから、『王太子妃候補』と思われても仕方がありません。でも、信じていただけるかわかりませんが、わたくしとアロイス様との間は『兄妹』といってもいいくらいの気持ちでございましたの」
――だからわたくしは貴方に誤解された。
クロエはその言葉を飲み込んだ。
「そうか……クロエがそう言うのだから、そうなのだろう」
ルイスは軽く頷く。
ルイスが持ってきた飲み物をクロエに渡す。クロエはありがたく受け取る。
けれど、クロエの顔は困ったように眉を下げるだけだ。
「そう申されても、これだけは仕方がありませんわ。わたくしは選ばれなかった。そして選ばれようとも思っておりませんでしたから」
「……君とアロイスは物心ついた頃から一緒だろう? 私はてっきり王太子妃に選ばれるのは君だと思っていたよ」
「アロイス様の心を射止めるご令嬢が現れなかったら、そうなっていたと思います。しかし、彼は自分の意思で伴侶をお決めになった。わたくしはそれでいいと思います」
「クロエは、アロイスのことをなんとも思っていなかったのかい?」
ルイスの問いに、クロエはさらに眉尻を下げる。
それを見てルイスは、自分はこの質問をするべきでなかったと謝罪する。
「すまない、あまりに失礼な問いだったね」
「いえ、ルイス様の他にもそう問いかける方々が大勢いて……少々辟易しておりました。確かにわたくしはアロイス様を囲む友人中では異性で一番近い位置におりましたから、『王太子妃候補』と思われても仕方がありません。でも、信じていただけるかわかりませんが、わたくしとアロイス様との間は『兄妹』といってもいいくらいの気持ちでございましたの」
――だからわたくしは貴方に誤解された。
クロエはその言葉を飲み込んだ。
「そうか……クロエがそう言うのだから、そうなのだろう」
ルイスは軽く頷く。


