悪役令嬢の初恋

 振り返りきつい眼差しをクロエに向ける。
 王太子妃に選ばれる前によく見た顔だわ、とクロエはソレンヌに上品に微笑んで見せた。

「そのような俗悪な表情はお隠しなさいませ。いつどこで足を引っ張られるかわかりませんから」
「……心にとめておきましょう」
 
 ソレンヌは忌々しそうに言うと、会場に戻っていった。