(相変わらず綺麗なとこだなぁ。天井高~)

 豪華絢爛たるお城の中の応接の間に通され、私はもう何度目かの感嘆の溜息を吐いた。
 先ほどは赤い絨毯の敷かれたエントランスの両側にずらっと並んだメイドさんたちに一斉に「お帰りなさいませ、聖女コハル様」と頭を下げられてひたすら恐縮してしまった。
 どうしても場違いに思えて7年前も落ち着かなかったけれど、この歳になってもやっぱりそれは変わらないみたいだ。
 メリーを抱っこしていなかったら、移動中もきっとずっとそわそわと手持無沙汰だっただろう。
 
 ティーアと私のために紅茶を入れてくれたメイドさんたちが丁寧にお辞儀をして部屋を出ていき、ふたりきりになったところで向かいのソファに座ったティーアが口を開いた。

「実は、困ったことになってしまって」

 その神妙な顔つきにごくりと喉を鳴らす。

「もしかして、また魔王が復活しちゃったとか?」
「いえ、魔王はちゃんと封印されたままよ」
「そう、良かった。じゃあ……?」
「その……とても言いにくいのだけれど……」
「?」

 私が首を傾げていると、ティーアが本当に言いにくそうに私に訊いた。

「コハルには今、好きな方や、将来を決めた方はいるのかしら?」
「へ?」

 まさかのコイバナに一瞬冗談かと思ったが、ティーアの表情はいたって真剣そのもので。

「いない、けど……?」
「そ、そう!」

 明らかにほっとした様子のティーアを見て更に首を傾げる。

「ティーア? 一体、」

 そう訊ねようとしたときだった。
 廊下の方が急に騒がしくなった。

「お待ちください!」
「どうか、今少しお待ちを……!」

 そんな悲鳴のような声が複数聞こえてくる。
 ティーアがそれに気付いてソファから立ち上がった。

「まさか……!」

 次の瞬間、応接の間の扉がバンっと勢いよく開かれた。