「……皆はどこです?」

 口から出た声が、自分でも驚くほどに低い。
 もし彼の言葉が真実なら、彼の目的が本当に私なのだとしたら、リューやローサ、メリーは彼にとって邪魔な存在ということになる。
 眠りに落ちる前に見た、目を閉じて動かなくなった彼らの姿。
 考えうる最悪な答えが浮かんで、でも彼はその問いにも軽い口調で答えた。

「あー、まだあの場で寝てるんじゃないかな。どうだろう。誰かがどこかに移しちゃったかな」
「……っ」

 そんなふざけた答えに私が強く睨み上げていると彼は首を傾げた。

「やっぱり怒っちゃった? でも全部が全部嘘ってわけじゃないよ。魔族がいるのは本当だし」

 そう言うと彼は私の髪から手を離し、徐にベッドから立ち上がった。
 月明かりが逆光となって彼の表情がまた見えなくなって――次の瞬間、バサっという大きな羽音が部屋に響いた。

 ――!?

 私は目をいっぱいに見開く。
 カネラ王子の背に突如、禍々しい翼が現れたからだ。
 同じ翼でもリューのそれとは似て非なる――あれは7年前に嫌と言うほどに見た『魔物』の翼だ。

「俺が、魔族だから」