「一体、何が……?」

 起き上がろうとして、身体に全く力が入らないことに気付く。
 まるで聖女の力を使ったあとのような感覚。
 視線を巡らせてここが宴の場ではないことがわかった。
 もっと狭い、白くて寂しい誰かの部屋。その部屋のベッドに私は寝かされているらしい。
 アーチ型の窓から細い三日月が見えて、先ほど差した光が月明かりだとわかった。
 リューもローサも、メリーもいない。

(なんで)

 なんでこんなことになっているのか、その理由がわからない。
 ――違う。わかりたくない。考えたくない。信じたくない。

 なのに。

「相当に強い香みたいだから、当分動けないと思うよ」

(香……?)

 すぐに思い当たったのは宴の場に漂っていたあの甘い香り。