「ですので、もし陛下が塔に入られたのでしたら5年ぶりとなります」

 ぎゅっと強く拳を握って、私はセレストさんに訊ねる。

「……その部屋へは、お城の中からでも行けますか?」
「勿論です」
「案内をお願いできますか」

 するとセレストさんは「かしこまりました」と頭を下げた。



 立ち入ったことのない暗い廊下を進み、辿り着いたのは古そうな扉の前だった。

「こちらが塔の入口になります」

 セレストさんは腰に掛けられた鍵束からひとつの鍵を選び、扉に取り付けられていた錠前に差し入れた。
 錠前が小さな音を立てて開き、セレストさんが閂を外していく。
 そして、ギィっと耳障りな音を立てて扉が開いた。
 中は円形の部屋で螺旋階段が上に向かって伸びていた。照明は付けられておらず、日が暮れたこともあり真っ暗だった。
 メリーはもう眠たそうでおいてきてしまったけれど、一緒に来てもらえば良かったかなとちょっと後悔する。

「コハル様」
「え?」

 振り返ると、セレストさんが胸に手を当て私に深く頭を垂れていて。

「陛下を、よろしくお願いします」
「! ……はい」

 私はしっかりと返事をして、その真っ暗な螺旋階段を上り始めた。