「彼が竜帝だから?」
「それは違います!」

 強く首を振ってはっきりと否定する。
 それは違うと言い切れる。

「じゃあ、顔が好みだったとか」
「……顔は良いとは思いますが、むしろ良過ぎて困ります」
「あはは、そうなんだ。……じゃあ、そんな彼に押し切られちゃった?」
「それ、は……」

 違うと、はっきり否定できなくて焦る。

「でも、彼はゆっくりでいいって……いえ、そもそも7年前に私彼と約束をして、彼はその約束を守ってくれただけで」

 そう。だから彼は何も悪くない。
 私の覚悟が、まだ出来ていないだけだ。

「約束かぁ。まぁ、君が彼から愛されてるのはよくわかるよ」
「?」

 エルが自分の首元をとんとんと指差して、私は首を傾げる。

「コハルのここ、花が咲き乱れてるみたいだ」
「!!」

 その意味に気付いて、私は焦って自分の首元を隠した。
 先ほどリューに何度も強く口づけられたことを思い出して顔が熱くなる。

「僕のせいだとは思うけど、竜人族は昔から直情的というか情熱的だからなぁ。ごめんね、コハル」
「……」

 私だってわかる。
 リューから愛されていることは、痛いほどにわかっている。

「……嬉しいんです。彼に愛されて、必要とされて……私なんかがいいのかなって思うくらいで」

 それに答えたいと思うけれど、うまく出来なくて。
 リューに申し訳ない気持ちばかりが大きくなっていく。