ほこりのかぶった学習机の引き出しを開け、財布を取り出す。

中身は、一万円札が三枚と小銭がいくつか。しばらくは、これで足りるか。

端のほうにあったゴミ箱におにぎりを包んであったラップを捨てる。中身は、線路を歩いている途中で食べた。

タンスから服を数枚持ち、その辺に転がっていたリュックに財布と一緒に詰め込む。


一通り準備が終わり、部屋を出る。ダイニングテーブルにスマホらしきものが見え、手に取り電源を入れる。

充電は80%。放置してたのに結構ある。

スマホはポケットに入れて玄関に向かう。ここにはもう用はない。またなにか足りなければ戻ってくることになるが。


とりあえずは大丈夫だ。そう思って玄関で靴を履こうとしたとき、リビングのほうで電話が鳴り始めた。


俺は、忘れていた。いつも電話には出ないようにしていること。

この家にかかってくる電話なんて、一つくらいしか思いつかない。