すると右手をひっぱられながら、望くんによって扉が閉められてしまった。
「映茉、かわいい」
「へあ……っ。うむっ」
とたん甘く唇を押し当てられ、不可抗力で変な声が出る。
望くん、ここ家の前なのに。
と思ったのも一瞬で、気が付いたときには唇は離れていた。
「顔真っ赤」
「あの、あんまり指摘しないでいただけるとうれしく思います……」
顔を隠すように覆った両手をさらりと離され、そのまま左手をぎゅっと握られる。
「桜、見に行くんだろ」
「うん......!楽しみだなぁ」
春休み真っ只中の4月2日。今日は、あの原っぱへ桜を見に行く約束をしていた。
望くんは原っぱから近いのにここまで私を迎えに来てくれる。
そんな、ささいなことが私にとってはうれしい。
春。無事に二年生へ進級できた私たち。翼さんは絶賛リハビリ中みたいだけど、もうすぐ退院できるみたい。でも、学校に復帰となるとやっぱり二年生からになってしまうみたいだけど。
流星くんも無事に受験に合格したらしい。それが北田高校なのには少し驚いた。



