今はまだ、折れた翼でも

1月14日。

積もらないほどのさらさらとした雪の降る、寒い夕方のことだった。

望くんと下校していたとき。

望くんのもとへ、一本の電話が入った。


電話に出た望くんの顔は、一瞬にして驚きに変わる。

どうしたんだろう。なにか、あったのかな。


そう思っていると、ずいぶん早く電話が切れた。

望くんが、小さな声でつぶやく。



「……翼の意識が、回復したって。今、父さんから電話が」

「え、ほ、本当に?」



とつぜんのことにびっくりして、心臓の音が速くなる。

望くんからは、もう翼さんの目覚める可能性は低いって聞いていた。

だけど。



「……走ってもいいか、映茉」

「……私も、行っていいのなら」

「むしろ、来てほしいくらい」



私は首に巻いていたふわふわの白いマフラーをしゅるりと取る。

望くんが、私の右手をぎゅっと強く掴んだ。

離さないように。



「お、お願いします」

「分かった。ありがとう」



そう返事が返ってきた途端、足が勝手に動くみたいに走り出した。

私は、それはもうとんでもなく足が遅い。

だけど望くんと走れば、移り変わる風景は速くなる。

冬なのに握る手は暖かかった。