今はまだ、折れた翼でも

「っおっと」



倒れる、と思ったはずなのに、身体に強い衝撃も痛みも感じない。なにかに、支えられる感覚。

私、どうしちゃったんだろう……。

そうして何気なく上を見上げてみれば、至近距離で誰かと目が合った。


ぼやけた視界のまま見つめるのは、見たことのある顔。



「のぞむ、くん……?」


「は?」



でも、返ってきた声はいつもの望くんの声よりちょっと高い気がした。

顔は望くんなのに。なんだかおかしい。



「あんた......誰。望の知り合い?」

「……え?」



あれ、もしかして目の前にいるのは、望くんじゃないのかな?



「てか、熱やば……。絶対家帰ったほうがいいけど」



望くんに似てる男の子は、私の前髪をよけておでこに手をあてた。

……というか、よく見たら顔も、望くんより少し幼いかも。目線も、いつもより少し近い気がする。