あの日、大城病院で退院するとき、ふと一つの病室が目に入った。

『白岩翼』と書かれたネームプレートが貼ってある。






母親からは、自己満足の愛を。父親からは、終わった愛を。

俺からは、復讐の愛を。


複雑で醜く、それでも引き裂くことのできない愛を注がれた俺の兄である白岩翼に、弟である白岩望が胸を張れる日は、来るのだろうか。


でも、今の俺は翼に会えない。いや、合わせる顔がない。

もしも、もう一度会えたなら。この戸を開けられたのなら。翼に言いたいことがある。



『ごめんな』と、『ありがとう』を。