……石井たちと喧嘩をするのは自分のためであって、翼のためじゃない。

そう遠くない記憶が呼び起されるのを必死に抑えて、俺は石井たちがいるというたまり場に行った。



「あんたが、白岩翼の弟?顔似てんね。なんか、ムカついてきたわ。お前の存在が、白岩翼を思い出させる」



そう言って、リーダーと思われるピンク髪のヤツ————石井が、俺の頬に一発拳を入れる。

兄が車から受けた衝撃よりも強くないと思えば、別に痛くはなかった。

翼が中学時代に傷だらけでよく帰ってきていたのはこのせい。

高校生になってもやられていたのかは分からないが、少なくとも関係は続いていたはず。

だが、こいつらが一人の人間に執着して、ここまで徹底的につぶす理由が分からない。


俺は、自分という存在があることを確認するために喧嘩をしていた。だけど、こいつらは違う。

悪意を持って、白岩翼に攻撃をする。それは喧嘩じゃなく、一方的な暴力であり、いじめだ。


だったら、その優しさから反抗できなかった白岩翼の代わりに、俺がこいつらに反抗してやろうと思った。

俺は、そんなに優しくない。