今はまだ、折れた翼でも

1月中旬の学校帰り、空き地で飲酒をしている四、五人くらいの男子高校生の集団を見た。

そして運悪く視界に入ってしまったのか、空き地に引き連れられる。


どういう風に対応していいかわからずぼーっとしていると、生意気だと言われて一発顔を殴られた。

楽しそうだなと、思った。俺も誰かを、こんなふうにできたら。


気が付いたら、殴ってきた目の前にいたヤツの腹に強めの拳を入れていた。

うっと、俺に殴られた奴は苦しそうに呻く。


ああそうだ。俺は。

やっと、目が覚めた気がした。

俺は、母親のために生きているんじゃない。いや、『翼』になって母親のために生きているんじゃない。

今、殴られた頬に痛みを感じているのは俺。そして、こいつを殴ったのも俺。

『翼』じゃない。