やっぱり噂は本当だった。
どこか頭の中であの噂は嘘かもしれないと思っていたけど、その考えは根底から崩れ落ちてしまった。

「一緒に過ごせるのも、あと少しになっちゃったけど…それまでよろしくね」

あと少し。
来週からは春休みに入ってしまうから、先生と一緒にいられる時間は本当にあと少し。

「先生、終業式のあと時間ありますか?」
衝動的に発した自分の言葉に、自分でびっくりしてしまった。

終業式のあと、私は先生と二人きりになって、どうしたいんだろう。
後先考えずに発言しちゃった。

「時間…前持って教えてくれれば、合わせるよ」
そんな私の気持ちを知らず、先生は私との最後の時間を作ろうとしてくれている。

せっかくの機会だ。
先生と最後の時間を過ごしたい。


「じゃあ、終業式が終わったあと、1時頃…校門入って右奥の桜の木の下で待ってます」

あの桜の木の下は私が1番好きな場所。
今年は桜の開花が早くて、少しだけ咲き始めている。
きっと終業式の頃には満開だ。

「きっと、その頃には満開になってるだろうね」
私と同じことを先生が考えていたと思うと、ちょっと嬉しい。


せめて、残りの時間はいつも通りに過ごしたい。
先生との何気ない日常の思い出が作れますように。