先生との個別学習は続いていて、最近は進路のことや将来の不安を相談できるようになっていた。
先生は私たちよりも少し大人で、でも年上過ぎない。
この感じが心地よかった。

もちろん私は先生のことが好きだから、いい子だと思われたいって気持ちもある。
けれど、頼りたい気持ちも同じくらい大きなものだった。





もう今年も終わってしまう。
たびたび提出している進路表だけど、どの進路も現実味がない。
現実味がないっていうのは、自分の成績が合格ラインに届かないとかっていう意味とはまた違う。
その学校に入って、勉強している自分が想像できない、とういう意味で現実味がない。

それはきっと学校に行く目的みたいなのが、ないからなのかもしれない。
高校までは何となく勉強して、何となく学校に行っていたけど…

「先生はどうして先生になったんですか?私は将来の夢とかないから、進路どうしたらいいか分かんないんです」

モヤモヤした気持ちが、なかなか晴れず、思い切って放課後の個別学習中に先生に聞いてみた。
先生は、うーんと数十秒くらい考え込んだ。

「答えになってなくて混乱させそうだけど、俺もよく分かってない」

「どういうことですか?」

「こんなこと生徒に言ったらよくない気もするけど、流れに身を任せてたら教師になってた…って感じかな…」

先生は少し気まずそうな顔でそう答えた。

流れに身を任せる。
簡単なようで難しい。


桃は、やりたいことが決まっていて、大学に進学して英語を勉強したいと言っていた。
私は何がしたいんだろう…