その4


「それから、殺された数の呪いをリレーする相手に、開けずの手紙を送らないでも死ねちゃった人。もしくはノルマ以下の手紙しか送らなくても死ねちゃったとか…。アライブへ実際に投稿されたケースでは、存在しない住所に手紙を送って、事実上、呪いの拡散を拒否したのに死ねた人もいた」

「…」

鷹山の手にしたチキンカツは、まだその口に運ばれていない…。

「さらに、二次以降の呪われ手から手紙を受取っても、その手紙自体が呪いを発効できず、ルールにのっとりながら、呪いの拡散が結果的になされ得なかったケース。いわば無精卵みたいなものですな。加えて、封を開けなかったり、動く血のりも不発で拡散が止まったのってのは結構あるでしょうね」

「ふう…、深く考えてみれば、いろいろ出てくるか。それで国上さん、このことで何か、鬼島の考えていたことがわかったとかってことですか?」

ここで国上の目からは鋭い眼光が放たれた。


***


「鷹山さん…、新幹線の車中で、やっともうひとつ頭に浮かびましたよ」

「なんですか、そのレアケースとは!」

「手紙を受取って、喜ぶ人です」

「!!!」

鷹山はさすがにのけ反ってしまった。

「…例えば手紙を受取った人が、その時点で自殺を考えていたとしたら…。で…、その人がもし、何らかの理由で多くの人間に恨みを持っていて、できれば道連れに死なせてやりたいと思っていたら、どうでしょう?」

「うう…、開けずの手紙が、場合によっては渡りに船ってことになるわけか…」

「仮に、50人なり60人なりの人間を死なせたいと願う呪われ手が、それだけの数を無事”殺され”続け、耐えきれたとしたら…。その人が自ら命を絶てば、一挙に手紙を受取った数十人、一気です。これは連鎖自殺の大量発生につながるアクションです」

「…」

ここでやっと、鷹山は国上の言わんとすることが読めてきたようだった…。