その3


その日、福岡市内は透けるような晴天に恵まれた。
昼過ぎに福岡駅に着いた鷹山と国上は、早速レンタカーを借り、福岡市内のファミレスで昼食をとっていた。

「鷹山さん、新幹線の中でいろいろ考えました。鬼島は自ら編み出した、百夜殺し拡散の呪いのプログラムをこの世に放った。その際、どんな展開、変遷をたどるか、綿密なシュミレートを敷いたでしょう。それを左右するのは、なんといっても、開けずの手紙を受取った呪われ手がどんな行動、顛末を遂げるかだと思うんです」

「ええ、そうですね」

「では、具体的にどんなリアクションがあるか…。おそらく大多数は、数夜”殺されて”数通手紙を送り自らこの世を去る、このパターンでしょう。他はレアケースになる。まず、水野洋輔さんの百夜突破…。じゃあ、それ以外では?」

ここで鷹山は国上に振った。


***


「そうですね…。50夜とか60夜とか…、極端な話、長期間耐えたが、百夜突破前にギブアップってケースですかね」

「他にはどうです?」

「うーん、どうかな…。改めて考えると、この3パターン以外はすぐに思い浮かばないですね」

「鷹山さん、鬼島はきっと、それ以外の可能性のあるあらゆるリアクションを想定したはずです。我々の考えが及ばないケースも…。その結果、自分の生んだ呪いのシステムがどんな展開に導くかれるかを織り込んで、負気エネルギーの発散分配を予めセットしたはずだ。周到な計算の下で、時期的な面も含めて…」

「では、実際にどんなケースが…?」

「まずは、そもそも呪いにかからない人ですな」

「えー!そんな、ケースあり得ますかね?」

「あくまで可能性としてです。例えば、痴ほう症の人とか、あるいは免疫とか抗体みたいなものを持ってるとるか…。あと、水野さんのように百夜突破した後の2度目とか…」

鷹山は、フォークに刺したチキンカツを口に運ぶのを忘れ、しばし唖然としていた。
そして、九州に入ったこの時点で、こんな切り出し方をしてきた国上の真意を図りかねた。

”国上さんは何を言おうとしてるのだろうか…?”