挑戦者たち、九州へ
その1


城田史奈のスマホに野坂奈緒子からの着信があったのは、自宅へ戻って2時間ほどしてからだった。

『城田さんのケータイでよろしいですか?』

「はい、野坂先生ですね?」

『始めまして、野坂です。いとこの海老田さんからケータイを番号聞いたので…。今、よろしいですか?』

「はい、大丈夫です。結子からは聞いていますので、どうぞ…」

奈緒子と史奈の会話は30分近かった。
もっぱら、奈緒子が九州の”状況”を尋ね、それに史奈が答えていた。

ただ、随所で奈緒子は不安に怯える史奈の心察し、さかんに温かい言葉をかけて励ました。
最後は史奈の目から涙が流れていた。


***


史奈は奈緒子に九州で今起こっていることを”そのまま”話した。

”野坂先生は、中高校生の連鎖自殺と手紙の呪いが関係してたと考えてる。言葉を濁していたけど、数か月前まで連鎖が頻発していた東京西部で、あの先生はくびれ柳とかに何らか関与したような口ぶりだったし…”

『…史奈さん、こっちも数か月前までは女子生徒を中心に、あっちこっちの学校で連鎖自殺が立て続けだったの。でも、9月末にはすっかり落ち着いたのよ。しかるべき人たちが動いて…。だけどね、それも生徒のみんながしっかり踏ん張ったからなの』

「じゃあ、野坂先生…、東京の連鎖も九州と一緒ってことだったんですか!」

『今の段階では、まだはっきりとはね。…九州も今は大変な状況だけど、友達を信じて心を強く持ってほしい。必ず、事態は好転するわ。私も知恵を絞る。だから、不安な気持ちに負けないで。同じ思いの友達にも、あなたからそれを伝えてくれる?』

「野坂先生…」

”あの先生はおそらく、九州のこの騒ぎを解決できる手立てに心当たりがあるんだわ。なら、あの先生を信じよう…”

史奈は奈緒子からもらった言葉で、大げさならず百万の援軍を得た思いに浸っていた。
ところが、その数時間後、彼女に衝撃の一報が届く…。