救済なんていらない

「合計。1080円となります。」
店員さんのとてもとても事務てきな声を聞きながらさっきの出来事を思い出す。
ホントなんだったんだ。あの人。
「おつり……ってキャー--ッッ!!!!!!」
ん⁉えっな、ん、なに!?
さっきの男の子が登場……ってところで回想からいきなりこっちに戻された。
も、もしかして虫⁉
急いで周りを見渡す。
…………………………え?
「っな、にこれ……」
レジから見えた景色は……異様だった。
逃げて!と叫ぶ店員さん達の声。キャーっ!と切羽詰まった声。
皆が店内を何かから逃げているようで、走り回っている。
そして、かすかに棚にぶつかったような音がして、商品が落ちる音。
もしかして、と。あるサイアクな展開を想像した瞬間。
手前の棚の奥で誰かを追いかけている。そう、感じる男の人が一瞬チラッと見えた。
顔が、他の人達とは違った。口角が上がり、手には……
そう思った瞬間急に目の前が暗くなったような気がした。
に、逃げなきゃ……そう思っても脚が動いてくれない。
さっき脚立にのぼった時とはちがう。別の恐怖。
このとき、イヤでも脚を動かして逃げなかったことを後悔した。
皆、自分から逃げ回っているのに、一人だけ近くのレジの方で動いてない女の子がいる。
ソイツはきっとそっちのほうが異様に思えたのかも。
さっき、一瞬。目が合った気がした。
それに気づいたのはたった今。
後ろ。誰かがいる気配がする。
私の影に覆いかぶさって、恐怖すら感じる影が無機質な床に映っている。
あぁ……これ、ムリっぽい。
目をつむることさえできない。
桃瀬 はす。小学生4年生。大ピンチなようで。と他人事みたいなことを考えて気を紛らわしてみる。
誰かの声が聞こえてきた気がした。
―――ガッッッ!
鈍い音が響く。
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