「……守護騎士でなくなっても、泣いているシルをそのままにしたりしない。あの時、誓った通りに、ずっと守るって決めているから」
「あくまで約束は、あなたが守護騎士の間だけよ。エディルは今まで十分守ってくれた。守護騎士の誓いを破棄したのだから、これでもう私たちの関係はお終いだわ。……もう、私には関わらないで」

 その瞬間、エディルの指先が、私の唇にためらいがちに触れた。

「そんなに泣いているのに?」
「っ……泣いてないわ」

 泣いたことなんてない。私は公爵家に生まれたのだから。

「――――泣いてる」

 涙なんて流してないのに、どうして、確信したようにそんなことを言うの?
 なぜ、そんな風に笑うの?

 距離を取らなくちゃ、いけないのに。

 乙女ゲームで何度も涙した、エディルの最後。
 私は、思わずエディルの胸を強く押して距離を取る。

「私にはもう関わらないで。エディルなんて、騎士団でどこまでも昇進してしまえばいいのよ!」