誕生日パーティーが終わり、私は自室へと戻るまえに、公爵家の整えられた庭園の中にある誰も知らない場所に身をひそめた。

 泣きたくなると、いつもこの場所に来ていた。

「うっ……。エディル」

 公爵家令嬢として育てられた私は、泣くことを許されなかった。
 それでも、悲しくて泣きたくなってしまい、この場所に潜んだ後には、必ずエディルがそばに来てそっと私の手を握っていてくれた。

 どうして、エディルには私が悲しんでいることがわかったのだろう。

 守護騎士を解任するまで、悩まなかったわけじゃない。

 もしかして、他の方法もあるんじゃないかって。
 エディルにそばにいてもらう方法が……。

 その時、誰にも見つからないはずの庭園の整えられた木々の隙間をガサガサと掻き分ける音がした。