十五歳の誕生日の朝。
 ことの起こりは今朝のことだった。

 目が覚めると、黒髪は燃えるような赤に。こげ茶の瞳は、目が覚めるようなターコイズブルーになっていた。鏡の前で、頬に触れてみると、鏡の中の私も同じ動作をする。

「悪役令嬢シルフィーナ・レイドル」

 私がはまっていた、乙女ゲームの悪役令嬢が鏡の中に映っていた。
 そして、今まで過ごしてきた記憶も徐々にはっきりとしてくる。
 確かに私は、公爵家令嬢シルフィーナだ。
 それと同時に、この世界が前世でハマっていた乙女ゲームの世界であることを理解する。

 王太子の婚約者に選ばれて、ヒロインに数々の嫌がらせをして、最後には断罪されてしまう悪役令嬢。

 でも、そんな自分の境遇よりも、真っ先に浮かんでしまったのは、幼い頃からともに過ごし、いつも私のことを全面的に守ってくれた幼馴染、エディル・フィルディルトのことだった。