なんだか、盛大な勘違いをされてしまっているらしい。
 私はただ、悪役令嬢の運命にすぐ巻き込まれてしまうあなたを助けたいから距離を取っただけで。
 嫌いだなんて、むしろ守護騎士を解任した私のことを嫌いになったのではないの?

「――――愛しているって、神と陛下の前で誓ったのに」
「え? だって……」
「そうでなければ、助けられない運命の度に、あんなふうに後を追ったりしない!」
「え?!」

 血が出そうなほど噛みしめている唇。

「シルが覚えていなくても……。たとえ、俺の穢れた運命に巻き込んでしまっているのだとしても」
「……全部、覚えているの?」
「――――シル?」

 私が乙女ゲームだと思っていた世界を、何度もエディルは繰り返していたというのだろうか。
 私が、画面越しに泣くたびに、エディルは実際に……。

 思わず私は、エディルの首に手をまわして、強く抱きしめていた。

「ごめんなさい! 私、自分の悪役令嬢の運命にエディルをこれ以上巻き込みたくなくて!」
「――――今回は覚えているんだ……。どう考えても巻き込んでいるのは、繰り返している俺のせいだ。だから本当は、少しほっとしたんだ。守護騎士を解任してもらえて。これで、自由に動いてシルのことを守ることが出来るんだって……。愛していると伝えてもいいんだって」