なぜか、私の好きな花ばかりが植えられた庭園。
 私が憧れているといつか話した白いガゼボ。
 整えられた木の枝の間を潜ってみたら、泣きたい時にぴったりな隙間まで用意されていた。

「平和すぎる……」

 あまりに平和なので、花壇に水を上げている私。
 私の使える魔法は、水魔法。
 水の精霊と契約した私は、いくらでも水を出すことが出来る。

 あまりに暇なので、水しぶきを上げて魔法で虹を作ってみる。
 庭の整備をしている使用人たちから歓声が上がった。

「そんなことで喜ぶなんて」

 そんな、悪役令嬢っぽいことを言いながら、調子に乗った私は、今度はきらきら煌めく氷の粒を作ってみせる。
 氷の粒は、ダイアモンドみたいに輝くと、日差しにあっという間に解けていった。