そんなこと、聞くまでもなく決まっていそうなものだけれど。
 なぜ、その屋敷に自分がいるのか理解が追い付かなくて思わず聞いてしまう。

「もちろん、エディル・フィルディルト様でございます」
「はぁ、貴女、お名前教えてくださる? それで、これはどういう状況なの?」
「侍女のルーシーと申します。この屋敷からでなければ、全てを自由にしてよいと旦那様より申し付けられております」
「納得いかないことも多いけれど、とりあえずよろしくね? ルーシー」

 そう言うと何故かルーシーは、一瞬動揺したような表情をした後に、深く私に礼をした。

 それにしても、良く分からないままに、私はこの屋敷から出ることを許されない状況になっているらしい。

「――――それで、エディルはいったいどこにいるの?」
「旦那様は、すでに陛下の命により戦場に出立されました」
「は……。戦場?」

 本当に理解が追い付かない。
 もしかして、断罪されていない代わりに、エディルの身に何か良くないことが起ころうとしているのだろうか。

 愛していると言いながら、屋敷から出ていけないと軟禁のような状態。
 そして、その後の説明もない。

 やっぱり、何かのきっかけで私はひどく憎まれてしまったのだとしか思えない。
 そして、そのまま屋敷から出ることを許されず、かといって何も不自由がない生活を私は過ごし始めるのだった。